誰でもそうですが、受験後から発表までに不安はつきものです。特に試験まで頑張れば頑張るほどその不安は大きなものとなるでしょう。私もそうでした。毎日、何か作業をしているときは気が紛れて大丈夫なのですが、やることがなくボーっとしているとき(例えば寝る直前や入浴時など)は不安が襲ってきます。

社会人の方はこの時期も仕事があるので、日中はあまり不安を感じる暇はないかもしれませんが、学生、とくに大学生などはちょうど春休みに入る時期で、家庭で過ごす時間も多くなることでしょう。

そんなとき、私はどのようにして過ごしていたか。

それは、天気図解析です。

気象予報士試験の一般、専門、実技をすべて勉強したならば、その知識、技術を生かして気象解析をしてみましょう。

気象予報士試験では、天気図が与えられ、問題によって、いわば誘導されながら解析をしていくということが求められました。しかし、現実の社会において、次はここに注目して解析しよう、この部分が注意だよ、などとは教えてくれません。資料を見て自分で試験問題の設問を作っていくようなことが必要なのです。それには、この実技試験の勉強とは別にまた多くの練習が必要でしょう。

ちなみに、私は試験勉強中に気象の解析を行ったことはありませんでした。だから、試験にマーカーペンが持ちこみ可といわれてもどのように使っていけばいいのかよく分かっていませんでした。

それに、まだ自分の予想を発表することはできないことですし、いくら解析を間違えても誰からも文句を言われることはありません。

私が行っている天気図解析を紹介したいと思います。

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まず、まだまだ解析して間もなく、一つ一つの資料への解析に時間がかかっているので、解析は予想天気図ではなく、解析天気図を使っています。

また、この解析天気図は1日2回(午前9時解析分と午後9時解析分)発表されますが、そのうち1回分を解析に使っています。

実況天気図は1日4回(午前9時分、午後3時分、午後9時分、午前3時分)発表されますが、解析天気図と同時刻の天気図を利用します。

解析に使う天気図は、気象庁のホームページに掲載されている高層天気図をプリントアウトして用いています。プリントアウトするのは、

①アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図(AUPQ35)

➁アジア850hPa・700hPa高度・気温・風・湿数天気図(AUPQ78)

③極東850hPa気温・風、700hPa上昇流/500hPa高度・渦度天気図(AXFE578)

④実況天気図(アジア)(ASAS)

この4種類を用いています。自分で解析をしてみて、これも必要だと思ったら追加で解析してみてください。ちなみに、

①~③は、www.jma.go.jp/jp/metcht/kosou.html

④は、www.jma.go.jp/jp/g3/wcAsia.html

(ともに気象庁ホームページ)に掲載されています。

あと、取得時間に注意してください。高層天気図は解析時刻から約3時間半後(午後0時30分と午前0時30)に毎日更新されていきます。アジア実況天気図は観測の2時間半後(午前11時30分、午後5時30分、午後11時30分、午前5時30分)

このことから、午前9時分を取得したい場合はその日の午後0時30分~午後5時30分の間に取得するのがちょうどよく、午後9時分を取得したい場合はその日の午前0時~午前5時30分の間に取得するのがちょうどよいことになります。私は後者の時間帯は夢の中ですから、前者、つまり午前9時分を毎日解析しています。

試験勉強をしてきた方なら分かることと思いますが、天気図はUTCで時刻化されています。つまり、午前9時は00UTC、午後9時は12UTCと書かれていますのでそこのところは注意してください。

長々と解析する資料について記してきましたが以下では私が行っている解析方法を記したいと思います。なお、ここで記す解析はあくまで私のやり方であり、まだまだ未熟であるため誤った解析であったり、不足している部分も多々あるかと思います。ご了承ください。

でははじめます。

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まず、用意するものは天気図以外に、色鉛筆(緑、茶、青、赤)、ボールペン(青、赤、紫)です。

一例として、2015年3月4日午前9時の解析を載せます。

3月4日 地上

①AUPQ35の解析

上に300hPa天気図、下に500hPa天気図が載っています。

300hPa天気図は、主に強風軸の解析に用います。

まず、風速60ノットの等風速線を緑の色鉛筆でなぞります。それを手掛かりに、風速が最大となるところを茶色の色鉛筆で書いていきます。等風速線は楕円型の綴じた形となっていることがよくあります。この時は、大方、楕円の長軸方向に強風軸が走っています。天気図に載っている矢羽根の向きも参考にします。こうすると、寒帯前線ジェット気流に該当するものと、亜熱帯ジェット気流に該当するものが現れてきます。

500hPa天気図は、上空のトラフの解析に使います。まず、地上天気図(ASAS)を用いて、500hPa天気図に地上低気圧の中心を赤色鉛筆で書き込みます。次に、等高度線の蛇行や、③の天気図の上にある、500hPaの渦度を参考にしながら、トラフの位置を赤色鉛筆の二重線で書きます。地上天気図の後ろに500hPaのトラフがあれば気圧の谷の軸は西に傾いていることになります。

3月4日 AUPQ35

➁AUPQ78の解析

上に700hPa天気図、下に850hPa天気図が載っています。

ともに、湿数3℃未満のドット域を緑色鉛筆で塗ります。この領域は湿っていて、雲が存在すると考えられます。これと地上天気図を見比べてみてください。緑の領域では、地上で雲が多かったり、雨や雪が降っていたりするのがわかります。また、850hPaは湿っているのに700hPaでは湿っていない領域は背の低い雲(乱層雲とか)の一方、ともに湿っている領域では背の高い雲(積雲とか)のマークが書かれていることも分かります。

更に、700hPaで-12℃、850hPaで-6℃の等温線を青色鉛筆でなぞります。これも冬場の寒気の目安で降雪の目安となるラインです。

そして、2つの天気図に地上低気圧の中心位置を赤色鉛筆で、850hPaには加えて、地上前線をボールペンで書きます。この前線位置と、緑の領域や等温線がうまく対応しているのがわかります。 (閉塞前線が略されているのは、紫ボールペンが今切れているからで特別な意味はありません。)

3月4日 AUPQ78

③AXFE578の解析

上に500hPa高度・渦度天気図、下に850hPa気温・風と700hPa上昇流天気図が載っています。

上の天気図の渦度が40以上の領域を赤色鉛筆、-40以下の領域を青色鉛筆で塗ります。

下の天気図の鉛直流が-20以下の領域を赤色鉛筆、20以上の領域を青色鉛筆で塗ります。

このとき、赤い領域は強い上昇流や低気圧、青い領域は強い下降流や高気圧と考えます。

➁天気図で緑の領域は湿っており、そういう領域で強い上昇流があると降雨になることが推測できます。

3月4日 AXFE578

色塗りに関しては以上です。4枚の解析は1時間くらいでできるでしょうか。

最後に、低気圧の今後を勝手に予想します。

低気圧前面と後面の温度移流、乾燥域の流れ込み具合、上空のトラフとの位置関係などからその低気圧が今後発達するのか衰弱するのか、それとも維持するのか予想してみましょう。

答えは翌日の実況天気図で明らかになります。それまでわくわく。

今回はちまちまと解析方法を書いてきたのでかなり長くなってしまいました。最後まで丁寧に読んでくださった方、ありがとうございました。