毎月10日前後に気象庁はエルニーニョ監視速報を発表しています。
昨日、12月号が発表されました。資料ファイル本体は気象庁HPより閲覧可能です。
 
もうご存知の方も多いかと思いますが、現在、エルニーニョが発生しています。しかも、ここ数十年で最大規模のエルニーニョで、巷では「ゴジラエルニーニョ」などと呼ばれているほどです。

エルニーニョが発生していることを知らない方も、今年の12月は気温が高めだな、なんだか冬が来るのが遅いなあ、そう感じている方は多いでしょう。そういえば今年はまだ鍋料理してないな、という方もいたりして…

エルニーニョが日本に与える影響については過去の記事を参考にしてもらえればと思います。(今年5月に書いた記事です。)

さて、この冬はどうなっていくのか?気象庁発表の資料とともにざっと見ていきましょう。

図 エルニーニョ監視海域(ペルー沖)の海水温偏差5ヶ月移動平均


まずは、こちらの図。これは5ヶ月移動平均の図です。なぜ5ヶ月平均にする必要があるのか。それは、各月ごとだと誤差が生じることがあるからですね。例えば、毎日の最高気温なんてまちまち。ある時は20℃、ある時は10℃。でも、これを1週間ごとの平均を取っていくと、冬に向かう時は気温が下がっていくという傾向を見ることができますよね。これと同じ考えです。ちなみに、今月発表の図なのに8月までしかプロットされていないのは、8月のプロットが6月〜10月までの平均で、11月はまだ計算中ということなので9月のプロットはできないということです。慣れるまでは難しい図ですが、グラフの表現方法ということです。

この図が、エルニーニョが発生しているかどうかを見極めるもっとも基本的な図となります。平年と比べて0.5℃以上高い状態をエルニーニョと、"気象庁"は定義しています。(図の赤い領域ですね。)

明らかに赤い領域にある上、現在ピークを迎えているようです。ちなみにその後の黄色い表示は、予想です。その黄色い範囲内に今後のプロットが入っていくだろうという予想で、台風でいうと予報円と同じ役割です。(黄色い箱に入る確率は70%)

まあ、エルニーニョが発生しているということは疑いようもないことですね。

図 海水温の分布と平年からの偏差図

この図は11月の海面水温(上)と平年からの偏差(下)を表していますが、エルニーニョで重要なのは下の図です。この時点で平年よりも3℃以上高い海水がペルー沖に広がっています。一方で東南アジア方面は逆に平年より低い海水(水色の領域)が広がっています。11月だけの情報なので、本来はこれだけでエルニーニョと判断できませんが、今回は3℃という大きな偏差を出しているので、この図だけでもエルニーニョと判断できそうです。

さて、気になるのはこの冬がどうなるかですよね。
気象庁の予想によると、ペルー沖の海水温は来年の春にかけて高い状態が続くという予想です。つまりはこの冬はエルニーニョが続くということですね。ただ、グラフに書かれている今後の予想からも、すでにピークは過ぎているようです。今後はゆっくりですが偏差が小さくなっていくと考えられそうです。


エルニーニョだから暖冬、と断言できないのが厄介なところ。最近注目を浴びているのが、インド洋で発生するエルニーニョに似た現象、ダイポールモード現象です。エルニーニョはラニーニャと対の言葉がありますが、ダイポールモードは正のダイポールモードか負のダイポールモードかというふうに表現します。

正のダイポールモードが起きると、インド洋西部で海水温が高くなります。(海水温が高くなるのをダイポールモードといったほうがいいかもしれませんが)。おや、これは太平洋でのラニーニャ現象みたいですね。太平洋でラニーニャが起きた時、日本は…厳冬傾向。
ということは、エルニーニョが起きても正のダイポールモードがおきると影響を打ち消しあうようになることがあるからです。

じゃあ、今のインド洋はどうなっているのでしょうか?

図 インド洋の海水温偏差推移


これは5ヶ月移動平均ではなく、各月のプロットなのですが、平年より高くなっていますね。正のダイポールモードが起きていると言えるでしょうか?
太平洋のエルニーニョに比べれば、偏差は小さく、0.3℃程度ですが、太平洋と違ってインド洋では0.15℃以上の偏差(図の赤い領域)でも十分な影響があると気象庁は考えているようです。

この後の予想(黄色い箱)を見ると、今後偏差が拡大していく予想になっていますね。

次第に収まってくるエルニーニョ、まだ発達するダイポールモード、今はエルニーニョの影響が大きくなっていますが、次第に、ダイポールモードの影響も無視できないかもしれませんね。(来春以降の話になってくるかと思いますが。)

気象庁の季節予報は現在、2月まで出されていますが、南西諸島、西日本、東日本は全ての月で平年より高い気温になることが予想されています。(☜これだけダイポールモード持ち出しておいて、この冬はまだ影響が出ないというオチですが)。いわゆる暖冬予想ですね。ただ、暖冬が全ていいわけではないことは理解しておいた方がいいですね。現に今日12月11日は太平洋側で大雨となっています。本来の冬型なら、太平洋側は晴れ続きだったでしょう。

今はまだ発表されていない3月以降の季節予想も、平年とは大きく違う気候になってくるかもしれません。ダイポールモードがどこまで発達してくるのか?エルニーニョがどこまで収束してくるのか?日本から遠く離れた地域の出来事が、日本の影響を及ぼしてきます。来年はなかなか思った通りに季節がやってこない、そんな予感がしますね。今後の発表にも目が離せません。