いよいよ明日は関東地方で雪かもという報道がなされています。皆さんも明日自分の住んでいるところで雪が降るのかどうか、気になるところでしょう。本記事では、独自予報を発表している各種気象機関の最新の予想をまとめました。ただし、最新といっても23日20時時点での情報です。今後、情報が更新されていくことが考えられますので、適宜、予報をご覧になることをお勧めします。

では、まず、そもそもなぜ雪が降るかどうかというような予想がされているのでしょうか?雪といえば冬型の気圧配置を思い浮かべる方が多いでしょう。天気図を見て見ましょう。

図1 23日18時の天気図

どうでしょうか。思い描いていた冬型とは違うなと感じた方が多いのではないでしょうか。そうなんです。関東地方では冬型の時は雪は降りにくいのです。なんで?と思うかもしれませんが、冬型で雪が降るメカニズムを考えてみればわかるでしょう。冬型の時は風が北寄りとなって、大陸の方から日本海を通って日本海側に流れ込みます。日本海に筋状の雲が現れるというのは有名ですよね。これで日本海側は確かに雪が降りやすくなるのですが、その雪雲は太平洋側までは流れ込めません。どうしてかというと日本海側と太平洋側の間には高い山々があるためです。(東海地方は実はこの日本海と太平洋側に山が存在しない隙間があります。名古屋の雪はその隙間を通ってきた雪雲が降らせることになるのですが、関東ではこのようなことは起きません)。この山によるブロックはフェーン現象と同じです。日本海側で湿った空気は日本海側で始末して、太平洋側へは乾燥した空気になる。冬場に太平洋側で乾燥した空気になるのはこのためですね。

少し余談ですが…フェーン現象なら気温は上がるの?と思うかもしれませんね。実はフェーン現象ではありません。フェーン現象みたいなものです。何が違うかというとフェーン現象は山を越えると気温が上がって、麓の気温よりも高くなるので気温が上がるのですが、この場合は山を越えて気温が上がってもなお麓の気温よりも低いというようなことが起きます。するとフェーン現象なのに気温が下がるということがあります。このことを"おろし"と言います。〇〇おろし、聞いたことあるのでは?

えっと、なんの話をしていたかというと、今は冬型ではないということです。実際に気象庁はこんな表現を使っています。

図2 短期予報解説資料(抜粋1)

"日本付近の冬型の気圧配置は緩む傾向"なのに雪とは。どういうことでしょう。

実は関東地方で雪を降らせるのは"南岸低気圧"と呼ばれる低気圧です。聞いたことがないという人がいるかもしれませんので簡単に解説を。

南岸低気圧とはその名の通り太平洋側を通過していく低気圧です。冬場に限らず1年中通過していくことはあるのですが、冬場に通過すると関東地方で雪を降らせることが多いことから関東の雪の代名詞として定着しています。

この低気圧は冬型が強いと本州に近づくことができません。冬型が強いというのは大陸の高気圧の勢力が強いということですから、低気圧である南岸低気圧とは相容れないものですね。近づくことができなければ当然雨雲もかかりませんので冬型の時は太平洋側は影響がありません。しかし、冬型が少し緩まるとその隙をついて近づいてくる厄介者なんです。

では、低気圧の雨雲がかかれば雪となるのでしょうか?

そう単純なものではないところが予想を難しくさせているところです。

その前に、そもそもどうして夏場は雪が降らないのかを考えてみましょう。

夏の暑い時、地上では30℃を越えていたとしても、上空、雲ができているような場所では基本的には氷点下です。過冷却ということもありますが、雲の中には多少なりとも氷や雪が存在します。そこから地上に向かって落下してくるとどこかで気温0℃線を跨ぐことになります。そして、それ以降は落下しながらも雪は溶けていくことになります。夏場は地上に落下するまでに雪は溶けて雨になります。たまに積乱雲からひょうやあられが降ってくることがありますが、これは溶けきらずに地上に達したものです。このように日本で降る雨は基本的には夏場でも上空では雪となっています。飛行機が雲に突っ込むと翼に氷がついて墜落することがあるというのも雲の中は気温が低いということを表していますね。

冬場は地上が冷えますので当然雪が溶けきらずに降ってくる可能性が高くなりますね。また、雪が溶け始める高さ(0℃)もより地上に近くなってきます。地上が0℃以下になっているとほぼ溶けることなく降ってくることになります。溶けきって仕舞えば雨、まだ溶け残りがある段階がみぞれ、ほとんど溶けずに降ってくると雪ということになります。

さて、雪が落下中に溶けるかどうかというのは気温以外にもう一つ湿度が大切になってきます。なぜ湿度が大切なのか。実は、雪というのは溶けながら蒸発もしているのです。先ほどは雪は周りの空気で暖められて溶けながら落下するというような説明をしましたが、全ての雪が雨となって地上に達するとは限りません。中にはその途中で蒸発してしまうものもあります。

汗をかいた後、うちわで扇ぐと涼しく感じるということは誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。これは汗(液体)が気体になるときに熱を奪って体温を下げるからでした。そもそも汗は体温が上がりすぎた際に体温を下げるために機能するものですね。

これと同じことが雪でも起きます。雪が周りの空気に暖められると、少し溶けてきますが、この溶けた水が蒸発すると周りの空気の温度が少し下がります。すなわち溶けにくくなるのです。そしてこの蒸発は湿度が低ければ低いほど活発に起きます。この作用は雪を溶けにくくする作用ですね。

ということで雪になるか雨になるかは地上付近の気温がどうなるか、また、湿度がどうなのかで上空の雪がどれだけ溶けずに降ってくるかにかかっているということがわかりました。気温によって雪が溶けることと、湿度によって雪が溶けるのを阻止すること、この両者の綱引きでどちらが勝つかで決まってきます。地上付近の気温と湿度によって雨になるのか雪になるのかのチャートがあります。

図3 雨雪判別図
気温が2℃でも、湿度が100%なら雨です。(綱引きの軍配は気温による雪解け)。普通に2℃の水というのは存在しますね。逆に気温が8℃とかでも湿度が30%ならば雪になります。(綱引きの軍配は湿度による雪解け阻止)。

はい、わかりづらい例えを出してしまい申し訳ありませんでした。

じゃあ、この地上の気温と湿度を決めるものってなんでしょう。

これがはっきり決まれば雨か雪かの判別はチャートを使って簡単にできるところですね。ところがその予想が難しすぎるのです。というのも気温や湿度は少しの違いで大きく変わってしまう、様々な要素によって決まってくる非常に複雑なものだからです。

①南岸低気圧の位置
②地上付近の寒気
③滞留寒気
④風向き
⑤降ってからの温度湿度変化

①南岸低気圧の位置
そもそも南岸低気圧はその名の通り南の方の低気圧ですからどちらかというと温かい空気を持っています。したがって低気圧が近づきすぎると気温は上がってしまいますね。では、低気圧が遠くを通ればいいのでしょうか?確かにそうなると低気圧の持つ温かい空気というのは入ってきません。しかし、ずっと前に、低気圧が遠すぎると低気圧の雲がかからないと言いました。雨自体降ってくれないのです。

図4 低気圧に伴う雨の範囲


この図のように低気圧による雨雲は北側に盛り上がったような分布をしますが、それでも離れすぎては雲さえかかりませんね。程よく離れ、程よく近くなければならないのです。経験的には低気圧による温かい空気も入らないけれど、低気圧の雲はかかるというのは低気圧の中心が八丈島付近を通過するときだと言われています。これより北を通ると低気圧の温かい空気のために雪ではなく雨になることがほとんどです。八丈島より南を通ると低気圧による雨が降らず、場合によっては日差しまで出てしまいます。このように雪が降るための条件の1つ目として南岸低気圧が八丈島付近を通ることが必要です。

②地上付近の寒気
これで低気圧の熱はシャットアウトされて雨も降るという環境はわかりましたね。しかし、単に低気圧の熱がなければ雪になるということではありません。あくまで必要条件です。さらに、実際に地上付近で気温が低くなければなりません。そのためには十分な寒気が必要になってきます。地上付近で雪が降るためにはやはり地上気温が2、3℃までは冷える必要があります。もしくは、よくテレビで上空〇〇mの寒気予想という図が出ますが、これでいうと上空1500m付近で-4℃が目安になります。なぜ-4℃なのか簡単に説明しましょう。

気温は上空へ行くほど下がりますが、100m上がると0.6℃下がると言われています。したがって1500m上空は地上と比べて9℃近く下がります。これで行くと地上で2、3℃となるには上空1500m付近は-6、7℃ということになるのですが、実際はこの100m上がると0.6℃下がるという前提が少し当てはまらず、南岸低気圧による関東の雪の際はもう少し下がり方は緩やかになります。それはこの後説明する滞留寒気が関係しているのですが、実際の予想の際は1500m付近で-4℃が使われることが多いそうです。

③滞留寒気
ずっとはじめの方に書いたことですが南岸低気圧は冬型が弱まった頃にやってくるといいました。そして冬型の時は太平洋側は"おろし"という冷たい風が吹くということも書きました。すると関東平野の北部、ここはちょうど山の太平洋側の麓にあたりますがここに冷たい空気がたまります。これが滞留寒気です。南岸低気圧が近づくと低気圧の北側は北寄りの風となるのでこの滞留寒気が関東内陸から平野部へと流れ込んでくるのです。こうなると地上では気温がぐんぐん下がってくることにもなります。

④風向き
ここまで気温に関するものでしたがこれは湿度に関するものです。図4のように低気圧が近づいてくると、近づく前(低気圧の北東側)というのは風向きはどちらかといいと北東寄りになります。そして低気圧最接近を終えた後(北西側)というのは北西寄りになります。いずれも北寄りなので③の滞留寒気が入ってくるということは変わりないのですが、北東寄りの風というのは関東に関しては海からの風ということになります。過去の天気解説で何度か北高型の気圧配置について説明しましたがあの時も北東風が入って雲が広がるというように海からの風というのは思っている以上に湿った空気なのです。湿度が上がると雨雪判別図では雪になりにくかったですね。でも、図4のように低気圧に伴う雨雲はどちらかというと低気圧の北東側に多く分布します。

⑤降ってからの温度湿度変化
「降り出しは雨でも雪に変わるかもしれません」という言葉や、「昼過ぎからは雨に変わるでしょう」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。雨や雪が降るとそれだけでも地上の気温や湿度が変化してしまいます。例え滞留寒気や風向き、低気圧の位置の条件を満たしていても雪が雨になったり雨が雪になったりします。例えば雨は上空から降ってきますので上空の空気を引き摺り下ろしてくることにもなります。上空に強い寒気があればこの空気が地上にやってくることになりますので地上の気温は下がります。すると降り出しが雨でも途中から雪になることがあります。あるいは雨や雪は降ってくる最中に蒸発します。汗のところで説明したように蒸発が起きると気温が下がるのでこれで雨が雪になることもあります。逆にこの蒸発が起きるということは湿度としては上昇することになります。雪に限らず雨の日は湿度が高いですね。そうなると雪ではなくみぞれや雨になることがあります。

このように南岸低気圧の場合の湿度や気温は色々な要素が関わってくるため普段の気温予想と比べてにかなり予想が難しいので気象庁も気象予報士も悪戦苦闘しているのです。


今回はかなり長い記事になってしまいました。ちょっと休憩…
ここまでの復習として下の空欄を埋めて見てください。

関東の雪は(    ①    )が接近してきたときに降ることが多い。これは冬型が弱まったときにやってきやすい。地上で雨が降るか雪が降るかは地上付近の(  ②   )と(    ③ )で決まる。この2つは様々な気象条件依存するため予想しづらい。例えば(  ②  )に関しては(   ①   )が(   ④   )島付近を通るかどうかや、関東北部の(   ⑤   )寒気、さらには降ってくる雨の(   ⑥   )などに影響される。(   ③   )は(   ⑦   )や降ってくる雨の(   ⑥   )に影響される。


こたえ…
関東の雪は(  南岸低気圧   )が接近してきたときに降ることが多い。これは冬型が弱まったときにやってきやすい。地上で雨が降るか雪が降るかは地上付近の(  気温   )と(   湿度  )で決まる。この2つは様々な気象条件依存するため予想しづらい。例えば(  気温  )に関しては(  南岸低気圧  )が(   八丈   )島付近を通るかどうかや、関東北部の(   滞留   )寒気、さらには降ってくる雨の(   蒸発   )などに影響される。(   湿度  )は(   風向き   )や降ってくる雨の(   蒸発   )に影響される。



それではそれぞれの要素①〜⑤がどうなのかを見て見ましょう。

まず疑問に思った方、そもそも南岸低気圧なんて天気図に書いてないぞ。そうなんです。まだ天気図には書かれていません。これから発生する予想です。

図5 明日朝の予想天気図

この予想は気象庁の予想ですが、八丈島に近いといえば近いような、離れているといえば離れているような…もう少し拡大して見ましょう。

図6 気象庁GSMモデル

低気圧の中心をどこに取るかという問題ですが、八丈島付近といえば八丈島付近ですかね。

地上付近の寒気は850hPaの気温で決まってきます。

図7 明日朝9時の850hPa予想
850hPaの気温線は3℃刻みですが、-3℃の気温がちょうど東京上空あたりを通っているのがわかります。こちらは微妙なラインなんですね。関東北部は-4℃以下の条件を満たしていますが、南部に行くほど条件を満たすかどうかという感じでしょうか。

図8 24日朝3時の925hPa予想図
滞留寒気について見て見ましょう。全体的に寒気が北から入ってくるのはわかりますが、等値線が5℃単位なので少し見づらい図です。しかし、関東北部(これだと中部あたりかもしれませんね)に等値線が閉じ、周囲よりも気温が低くなっている部分が見られます。すでに滞留寒気が南下してきている場面かと思いますが滞留寒気の存在は確認できます。

図9 風向風速

風向変化を見ると関東南部ははじめのうちは北東風、昼前後に北風、夕方には北西風へと変化していくことがわかりますね。

あとは降り出してからの気温変化、湿度変化によっても影響を受けます。

ということで、雪の条件への適合度合いとしては
△:南岸低気圧の位置
△:地上付近の寒気
〇:滞留寒気
×(朝)→〇(日中):風向き
?降ってからの温度湿度変化

と個人的には考えています。


さて、独自予想は発表できないので、ここで各気象機関の予想をざっと見て見ましょう。まずは気象庁です。


前橋の時系列予想


東京の時系列予想


東京は降り出しは雨で未明には雪に変わってくる予想ですね。気温に注目してください。東京は雨や雪が降り出すと一気に気温が上がってきます。図2によると気温が2℃まで下がると湿度は75%以下なら雪、75〜90%ならみぞれ、90%以上なら雨という経験則です。ちなみに気象庁が発表する雪予想というのはみぞれを含んでいることに注意です。


夕方から夜には雪は止んでくる予想ですね。

では、どれくらいの積雪が予想されているのでしょうか。


東京23区では2cmの降雪が予想されています。2cmというと雪国にお住いの方にとっては大したことないと思われるかもしれませんが雪の珍しい東京ではこれでも交通機関に影響が出る可能性があります。


次にウェザーマップが発表している予想を見て見ましょう。
こちらはみぞれマークと雪マークが分かれていますね。こちらも未明には雪になる予想です。気温予想を見て見ると昼前には0℃近くまで下がっていく予想ですね。前日に発表される最低気温は翌日の朝9時までの最低気温ですから、それ以降気温が下がることは考慮されていません。


ウェザーニューズの予想を見て見ましょう。(東京の予想です)

やはり雪予想。正午で気温が1℃予想です。


ウェザーニューズ社はこのような見やすい図を作成してくれています。今まで東京23区を中心に見てきましたが東京都内でも少し内陸に行くだけで本格的に積雪する可能性があるということもわかりますね。


日本気象協会はどうでしょうか。(東京の予想です)

この機関だけは全てみぞれ予想、他の機関の予想よりも気温が1℃ほど高い予想になっていますね。

さて、明日はどのようなことに注意すればいいのでしょうか。

まず、朝の通勤通学時間帯、雪がすでに積もっている可能性があります。これは23区内だけでなく、もっと内陸に関しても言えることです。朝から滑りやすくなっているかもしれませんので十分お気をつけください。具体的には…
朝はいつもより30分程度早く起きて外の様子をチェックしましょう。

雪が積もっている場合は、車の運転や自転車の運転は十分気をつけるか、できれば控えましょう。
雪用タイヤに交換していない方は積雪時は運転を控えましょう。自分だけでなく他人にも被害を及ぼしかねません。

歩行中に車がスリップして歩道に突っ込んでくる可能性があります。歩行中も車に気をつけましょう。
横断歩道を渡るときや歩道を歩く時も普段よりも車に気をつけましょう。

交通機関が乱れている可能性があります。時間に余裕を持って、途中では知らなければならないようなことにはならないようにしましょう。
交通機関は関東内陸部まで繋がっていることが多いので内陸部で多く積雪すると都内などでも影響が出る恐れがあります。都内で積雪した場合はさらに影響が拡大する可能性があります。

帰宅時間帯には雪自体はやんでいる予想ですが、積雪した場合は夜は路面が氷のように滑りやすくなっている可能性があります。雪で転ぶと腰を骨折したり頭を打ってしまう可能性があります。暗い夜道は特にお気をつけください。